●“バイクファンの祭典”として知られる8耐も今年で39年目。
●8耐の“いま”をどう感じるか、“見習い記者”がサーキットを初取材。
●レースの迫力、ファンブースの楽しさを実感した。
※この記事は2016年9月に発表した当時の内容で掲載しています。
驚愕! これはハマってしまうやつだ
2016年7月31日、鈴鹿8耐(2016 FIM世界耐久選手権シリーズ第3戦“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第39回大会)の決勝日、私(大学1年生)はメインスタンドの最前列にいた。目の前には68台の出場マシンが並ぶ。レース開始の午前11時30分が迫ると、観客全体がテン・カウントダウンを始めた。……3、2、1、GO!!!!! 絶叫するアナウンサー、客席では「行けーっ!」と拳を突き上げる男性、「きゃーっ!」と両手を握り締める女性。怒涛のようなエキゾーストノートが響きわたり、バイクの群れはあっという間に1コーナーへと消えていった。スタンドの興奮が冷める間もなく、周回したトップグループが帰って来る。「ハァーーーーーン」という音が近づいてきたかと思うと、弾丸のような速さのバイクが、ヒュン、ヒュン、ヒュンと、目の前を一瞬で通り過ぎていく。初めて目の当たりにするレーシングマシンの音とスピードに、思わず「スッゲー」と声が漏れた。バーチャル世代ド真ん中の私は、リアルなレースの迫力に一発でやられた。これはハマってしまうやつだ…。
“ガチのバイク好き”が集まってくる
“怪物イベント”といわれる8耐。今年は決勝日だけで6万9,000人が来場し、会期中の4日間で合計12万4,000人を集めた。メインスタンドの手前にあるイベント広場は、朝早くから大勢の人で賑わっていた。意外にも私と同じ世代のグループが多い。
大阪から来ていた8人組の1人は、「去年初めて見に来て、レースの独特な雰囲気が楽しかったので、今年は仲間を誘って来ました」という。仲間の女性は、「私は今回初めて。暑いのに大勢の人がいてびっくり。お祭りみたいでワクワクします」と、満面の笑顔だった。
来場している若者の多くは、いまどきの言葉でいえば「ガチ(本気)のバイク好き」という感じ。好きなメーカーやチームの応援がいちばんの楽しみという人が多い。仲間とイベントブースを回って、夏休みならではの“お祭り感”が魅力になっているようだ。
新しい発見が楽しい4社ファンブース
「GPスクエア」では、カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハのファンブース、二輪車関連企業のPRブースなどが多数出展。ライダーのトークショーやキャンギャルステージ、ゲーム、抽選会、物販コーナーなどさまざまな企画が行われ、来場者を楽しませていた。
■ファンブースで特別ミーティングイベント――カワサキ
カワサキは、8耐に「チームグリーン」を復活させて3年目。ファンブース「“KAZE”フィールド」では、人気の「カワサキコーヒーブレークミーティング」を特別開催するなど、ファンの仲間意識が高まる企画を実施。ライムグリーンのウチワやフラッグを手にしたファンが大勢集まってきていた。小さな子供を連れたお父さんが、マシンに子供をまたがらせて楽しそうに記念撮影をしているのが微笑ましかった。
■FIM世界耐久選手権の栄光を紹介――スズキ
スズキはFIM世界耐久選手権で、最多(14回)のシリーズ優勝を誇っている。ブースでは、そうした栄光の軌跡を紹介して、モータースポーツにおけるスズキの魅力をアピールしていた。九州から飛行機で来たというスズキファンのファミリーは、今年で4回目の観戦。「家族で8耐を観戦するのがわが家の夏休みです」と、お母さん。中学生の子供は「スズキのブースには、バイクのガチャガチャがあるのがスゴイ」と、獲得したミニチュアを見せてくれた。
■未発売のCBR250RRを国内で初展示――ホンダ
ホンダブースでは、7月25日にインドネシアで発表されたばかりのCBR250RRが、国内で初めて実物展示。カメラを構えたファンに終始囲まれていた。物販コーナーにも力を入れており、買い物を楽しんでいたイギリス人の夫妻は、「8耐は世界でナンバーワンのレースだって聞いている。いつか日本に来て、8耐を観たいと思っていたんだ。やっとその夢がかなったよ。」と話し、8耐と日本の旅とを満喫している様子だった。
■展示車両を豊富に揃えファンとの距離を縮める――ヤマハ
ヤマハは、ブース内に昨年の8耐優勝車両を展示したほか、「タッチ&トライコーナー」には人気モデルを10台設置。“強いYAMAHA”をアピールするとともに、ヤマハ製品と来場者との距離をグッと縮める空間を提供していた。静岡から1人で観戦に来たという女性は、「ヤマハの大ファンです。免許を取って1年半ですが、いまMT-03に乗っています。もっと運転が上手になりたいので、今日はトップライダーの走りを見て勉強です」と、笑顔をみせていた。
ヤマハが2連覇を達成! 感動のゴール
スタートから8時間。チェッカーフラッグを最初に受けたのは、ヤマハファクトリーレーシングチームだった。2位はカワサキのチームグリーン、3位はヨシムラスズキシェルアドバンスレーシングチームと続いた。夕闇のなか次々とゴールするマシン。勝利に向かって長丁場を走りきったライダーに向けて、スタンドでは感動の拍手がいつまでも止まなかった。
初めて鈴鹿8耐を取材して、このレースイベントは、主催者と出場チーム、スポンサー、二輪車関連企業、地元鈴鹿市、そして観戦にきたバイクファンが一体となって盛り上がる“真夏の祭典”であると実感できた。これだけのレースを長年続けている日本は、スゴイ国だとちょっと誇りに思う。来年いよいよ40周年。鈴鹿8耐は、2017年世界耐久選手権シリーズの最終戦に位置づけられる。海外の強豪チームもレースに加わってくることが予想され、まさに“世界決戦”として見逃せないレースになりそう。2017年、さらに新しい8耐の伝説をこの目で見届けたい。
JAMA「Motorcycle Information」2016年9月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
鈴鹿8耐