●二輪車の通行が禁止されている道路が全国に数多くあります。
●最近では規制が解除されるケースも出てきました。
●規制解除が広がるには、ライダーのマナーアップが肝心。
※この記事は2016年6月に発表されたものを元にしています。
ライダーから届いた意見が1,000件超
一般社団法人日本二輪車普及安全協会は、全国の二輪車通行規制区間に関する情報をデータ化し、同協会のWebサイトに公開しています。そこにアクセスすれば、知りたい地域ごとに規制の場所と実施時間、対象車両などの情報を確認することができます。また、ライダーが普段気になっている規制区間を選んで、その規制にまつわる実体験や要望などの意見を同協会に送信できる仕組みになっています。1年間で1,000件近い意見が届きます。その内容は、規制による不便や疑問を訴えるものがほとんど。
日本二普協は、「このサイトの目的は、バイクでは通行できない路線が各地にあることを知ってもらい、違反を犯さないようにしてもらおうというのが第一。また、ライダーから意見をもらって、私たちがその声を都道府県警察に届け、規制状況を点検する際の参考にしてもらおうと考えています」と話しています。
福岡市中央区・博多エリアの規制解除
「二輪車通行規制区間情報」で福岡県を調べると、福岡市内には非常にたくさんの規制区間が表示されています。その多くは国道202号と同385号に接続する枝道に設けられたもので、実質的にはその2つの国道の通行規制が、同市内の二輪車規制の主軸になっています。また、これらの規制は「総排気量250cc以下を除く 日曜・休日0:00~6:00」という内容です。夜間に走り回る暴走族対策であることが推測されますが、善良な一般ライダーももちろん規制の対象です。
国道202号の規制区間にあるバイクショップの店長は、「騒音を上げて走るライダーはごくごくわずか。その実態に合わせて規制方法や取り締まり方法を考える必要があると感じます。ルールを守っている善良なライダーほど不利益を被っているのが実情です」と話します。規制を避けて走行しているうちに、道に迷ってしまうライダーも多いはず。夜間ならばなおさらのことでしょう。
しかし、朗報もあります。これら国道202号と同385号のうち、福岡市中央区全域と博多区にかかる深夜の二輪車通行止めが、2015年3月末日をもって解除されたのです。市の中心部へ夜間のバイク通勤をしている人たちにとって、規制解除は嬉しいものになりました。残されている規制についても、点検・見直しが進むよう、今後の動向に注目したいものです。
125ccの通行も認めてほしい――大阪・湾岸エリア
大阪府は、西日本で最も二輪車通行規制が多い地域です。とくに大阪市内には、アンダーパスやオーバーパスなどの立体交差、川を渡る大橋やトンネルが数多く点在しており、原付を通行禁止にしているケースが多くあります。また自動二輪車については、暴走族対策と思われる時間規制の通行止めがいくつかの区間で実施されています。
府内の二輪車業界関係者は、「ライダーからの要望が多いのは、原付よりも自動二輪車に対する規制で、大阪市内であれば難波と心斎橋を結ぶ国道25号の夜間通行止めや、大阪城に近い大阪ビジネスパークの通行止めを見直してほしいというもの。ほかにも、湾岸地区の咲洲トンネルと夢洲トンネルが125cc以下の自動二輪車を通行止めにしており、それを解除してほしいという要望も多いようです」と話します。
そこでまず、咲洲トンネルと夢洲トンネルにクルマで行ってみましたが、どちらのトンネルも、125ccクラスのバイクならクルマの流れに乗って走ることができ、走行上の不安はなさそうです。もしこの規制が解除されれば、多くの125ccユーザーの利便性が向上するのは間違いありません。コスモスクエアで営まれる商業施設への客足も増え、経済効果も期待できそうです。
次に国道25号も走ってみました。この国道は、大阪市の中心部を南北に走る目抜き通りの一つ。難波交差点から心斎橋(新橋交差点)までの約1km区間は、日曜・休日の深夜0時から朝6時まで自動二輪車の通行が禁止されています。夜遅くまで働く人たちにとっては、バイクが利用しづらい規制です。
ライダーからの解除要望が多い大阪ビジネスパークもクルマで走ってみました。ここは大阪城の北東にある再開発区域で、オフィスビルや大型商業施設が立ち並ぶエリアです。現場を見る限り、二輪車を規制すべき理由はまったく思い浮かびません。そうしたところ、2016年2月に、同エリアの規制が一部解除されたとのことです。こうして少しずつでも見直しが行われているのは、ライダーにとって喜ばしいことと言えそうです。
京都市にみる二輪車通行規制の例
ライダーからの見直し要望が多い規制区間は京都地区にもあります。国道1号のバイパスの一部と、同9号のトンネル部分の二輪車通行止めで、その区間はライダーを側道へと迂回させる規制になっています。国道1号のオーバーパスをクルマで通行してみると、確かにカーブが連続するために運転には注意が必要ですが、同じような形状の道路は全国各地にあり、ことさらこの区間だけ二輪車を通行禁止にしている理由はわかりません。
ライダーの声をきくと、「通行禁止の手前が車線変更禁止なので、規制に気づいたときは車線変更が間に合わず、慌ててしまって危なかった」とか、「迂回した先の合流点や交差点を通過するほうが危険」といった意見もあり、規制は逆効果ではないかといった指摘も出ています。国道9号の地下道をクルマで走行してみましたが、二輪車の通行に何か問題があるとは思えませんでした。
最後にもう1例。京都で有名な清水寺の東側を走る渋谷蹴上線は、国道1号の東山淨苑前から花鳥橋北詰へとつながる峠越えの山道。原付も自動二輪車も、平日は朝9時~翌朝7時までが通行止めで、土曜・日曜・休日は終日の通行止めとなっています。この規制はおそらく、30~40年前に多発したローリング族を排除するために導入されたもの。
府内の二輪業界関係者は、「かつてのようなローリング族はいなくなっていますが、バイクに対する社会の目は、まだまだ厳しさが残っていると思います。私たちとしては、規制解除を警察にお願いするのと同時に、ライダーのマナーをもっともっと向上させて、バイクに対する社会的な理解をさらに広げていかなければならないと考えています」と話しています。
徐々に出てきた二輪車通行規制の見直しの動きがいっそう広まるよう、引き続きこの問題には関心を向けていきたいものです。
JAMA「Motorcycle Information」2016年6月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
規制解除のケースも出てきた!二輪車通行禁止の現場から(西日本編)