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2019.1.15

ネットでは得られない発見がある バイクミュージアムへ行こう!

●二輪車メーカーのバイクミュージアムが面白い。

●日本の二輪車産業の歴史、製品、取り組みの数々を目の当たりにできる。

●平成時代が終わるいま、歴史的名車を振り返り、鑑賞するのも一興だ。

スマホで検索すればどんな情報でも手に入る時代だが、ミュージアムの魅力は、展示されている実物を間近に見て、そこに何かを発見する楽しさだろう。リアルな経験を通してこそ、本物の知識や感動が得られるというものだ。

国内二輪車メーカー4社は、それぞれ「カワサキワールド」(神戸市)、「スズキ歴史館」(浜松市)、「ホンダコレクションホール」(栃木県茂木町)、「ヤマハコミュニケーションプラザ」(静岡県磐田市)という企業ミュージアムを持っている。どの施設も、バイクファンばかりでなく、学校の社会見学や地域の観光スポットとしても人気があり、最近は海外から訪れるビジターも増えているそうだ。
平成時代がもうすぐ終わる。昭和・平成の時代を彩った日本の名車の数々を鑑賞しに、ミュージアムを訪れてみてはどうだろうか。

01_カワサキワールド所在地

神戸市の観光スポット・メリケンパークに「神戸海洋博物館」があり、そのなかに川崎重工の企業ミュージアム「カワサキワールド」が併設されている。神戸港の観光活性化に貢献しようと2006年5月にオープンした。博物館との共通チケットで、年間約20万人が来場するという。

カワサキワールドに展示された川崎重工の「川」マークの石碑

カワサキワールドに展示された川崎重工の「川」マークの石碑

カワサキワールドに入場すると、1878年の創業から時代を追って事業や製品が紹介されていく。近代日本の歴史と共に、造船業から総合重工業へと発展してきた足跡が見て取れる。そこであらためて思うのが、バイクメーカーのカワサキは、日本屈指の重工業メーカーであるということ。巨大なエネルギープラントを建設し、船舶、鉄道車両、航空機等を製造、産業用ロボットの開発・供給も行う。明石海峡大橋の建設、英仏海峡トンネル、東京湾アクアラインの掘削など、「これもカワサキの仕事だったのか!」と、そのスケールに驚かされる。
「モーターサイクルギャラリー」のフロアに進むと、筆頭に展示されているのは、「Ninja H2R」と「Ninja H2」。フロントノーズには、川崎重工の「川」マークが刻印され、特別な存在感を放っている。カワサキのバイクづくりにかける自負心が伝わってくるような展示だ。

カウルを外して展示されている「Ninja H2R」

カウルを
ギャラリーにはほかにも、歴代のフラッグシップモデル、レースで活躍したマシンなどフロア全体で30台ほど並んでいる。バイク製品以外にも、新幹線やヘリコプターの実物が置かれているフロアもあり、鉄道ジオラマ、フライトシミュレーターなど、関心の向くままにいろいろな展示を見学できる。

往年のカワサキ車 レースマシンの展示が充実

往年のカワサキ車 レースマシンの展示が充実

カワサキワールドでは、2019年2月5日(火)~17日(日)まで、神戸海洋博物館の大ホールで、過去から現在までのカワサキ車の流れを表現する特別展「RE WIND」を企画している。一見の価値がありそうだ。

06_スズキ歴史館所在地

スズキの企業ミュージアム「スズキ歴史館」は、2009年4月に一般公開された。浜松市の本社に隣接しており、インターネットで予約して無料で見学できる。施設は3階建てで、3階→2階→1階の順で見学する。3階にはスズキの歴史を彩った製品の数々。2階では自動車の開発から生産までの流れを紹介。1階にはバイクやクルマの新製品と、レーシングマシンを展示している。

バイクとクルマの博物館「スズキ歴史館」

バイクとクルマの博物館「スズキ歴史館」

3階の歴史フロアは、時代の流れが整理され、当時の人々がなぜその製品を求めたかが理解できるように解説されている。年代ごとにスズキのバイクとクルマが展示され、製品が変遷していく様子を見て楽しめる。ただし、エントランスに展示されているのは、バイクでもクルマでもない。創業(1909年)の礎となった「鈴木式織機」である。初代社長・鈴木道雄の紹介から、スズキの歴史が展開されていく。

3階では”昭和感覚”が楽しめる!

3階では”昭和感覚”が楽しめる!

年代の区分けは単純な十進法でなく、当時の時代に応じたスズキの企業姿勢を踏まえて区分されている。まず「創意 1909〜1945」の時代は、織機。続いて「開拓・勤勉 1946~1963」の時代は、スズキ初の二輪車用エンジンであるパワーフリー号や、ビジネスの足として活躍したコレダシリーズ。「実行 1964~1977」の時代には、高度経済成長を背景に登場したスポーツモデルのGT750、GS400など。オイルショックを経験した「革新・貢献 1978~1985」の時代には、原付のスージー、蘭などが置かれる。そして「挑戦1986~」の時代には、ビッグスクーターのスカイウエイブ、ハヤブサ1300、最新のものは電動バイクのe-Let’sだ。
時代のエポックを築いた製品が選ばれているが、ロータリーエンジンを積んだモデルなど、スズキならではの珍しいバイクもたくさん見ることができる。地元の小学校の社会見学にも大人気で、年間1万5,000人もの児童が訪れるそうだ。

ロータリーエンジンを搭載したスズキ「RE-5」(1974年)

ロータリーエンジンを搭載したスズキ「RE-5」(1974年)

 

09_ホンダコレクションホール所在地

「ホンダ コレクションホール」は、「ツインリンクもてぎ」内につくられたバイクとクルマのミュージアムだ。ツインリンクもてぎへの来場者は無料で観覧でき、年間の来場者数は18万人以上を数える。展示点数はバイクが209台、クルマが65台、そのほか汎用エンジン等を含め約300点。世界有数の規模と質を誇る。

同ホールがオープンしたのは、1998年。昨年3月の開館20周年を機に、1階フロアの展示を大きくリニューアルした。「Honda 夢と挑戦の軌跡」コーナーを新設し、創業者の本田宗一郎と藤澤武夫が残した心に響く言葉を紹介。世界一の夢へと向かって走り始めた当時のバイク、クルマ、レースマシンなどを選りすぐって展示している。

創業者の言葉を製品とともに紹介

創業者の言葉を製品とともに紹介

2階に進むと、バイクとクルマでフロアを分け、懐かしい市販車を展示している。集められたバイクは約100台。メーンスポットに置かれていたのは、ホンダの原点である「自転車用補助エンジン」(1945年)と、「スーパーカブC100」(1960年)、元祖“ナナハン”「ドリームCB750 FOUR」(1969年)の3台。ピカピカに磨き上げられ、現代にも通用するデザインの美しさに、あらためて感心させられる。

時代を築いたホンダのバイク

時代を築いたホンダのバイク

ほかにも、さまざまな排気量のCBシリーズ(1960年代)や、1970~80年代に一世を風靡した原付バイクやレジャーバイクの数々、楕円ピストンの採用で大きな話題を呼んだ超高級スポーツ「NR」(1992年)など、眺めているとどんどん時間が経っていく。
続く3階には、ロードレース世界選手権やF1グランプリなどに出場した二輪と四輪のレースマシンがコレクションされている。二輪が約100台、四輪が約30台展示され、まさに圧巻の光景だ。ホンダは、創業(1948年)の翌年からレース活動に取り組んでおり、国内では浅間高原レース(1955年)、海外では英国・マン島TTレース(1959年)へ出場するなど、日本一、世界一へとチャレンジ。さらにWGPマシン、MotoGPマシンへとつながる流れは、「レースこそがホンダのDNA」と物語る。同ホールには「夢」を追いかけた人たちのロマンがあふれている。

整然と並んだ歴代レースマシンは壮観

整然と並んだ歴代レースマシンは壮観

 

13_ヤマハコミュニケーションプラザ所在地

最後は「ヤマハコミュニケーションプラザ」。ヤマハ発動機が1998年7月にオープンした企業ミュージアムで、創業時(1955年)への回帰や、企業理念、将来ビジョンを広く紹介しており、無料で公開されている。ヤマハ歴代の名車はもちろん、同社がエンジンを供給したトヨタ2000GTなども展示。マリン製品、スノーモビル、電動アシスト自転車、無人ヘリコプター、ゴルフカート、浄水プラントなど、多岐にわたるヤマハの事業が紹介されている。この施設も、ヤマハの“聖地”だからと訪れるライダーが多いらしく、海外からやってくるファンも増えているという。最近では、磐田市の観光スポットの一つとしてバスツアーが立ち寄ることもあり、地域の活性化にも寄与しているそうだ。

2階ではヤマハの歴史を紹介

2階ではヤマハの歴史を紹介

ヤマハ発動機の歴史に関するコーナーは2階にある。創業者である川上源一を紹介し、第一号製品の「YA-1」(1955年)を展示。楽器のヤマハとバイクのヤマハのロゴマークの違いなど、好奇心をくすぐるような解説もある。
続く「レースへの挑戦」コーナーでは、ヤマハが創業年に、富士登山レースや浅間高原レースに出場して表彰台を独占したエピソードを紹介。バイクメーカーが群雄割拠する時代にあって、後発メーカーながら一気に名を挙げたヤマハの勢いを伝えている。さらにこのフロアでは、ロードレース世界選手権に出場してきた歴代のレースマシン、1955~1990年代の市販車も年代ごとに配置し、各年代を代表するヤマハの名車を鑑賞できる。

各時代を代表するヤマハの市販車

各時代を代表するヤマハの市販車

一方、1階ホールでは、未来志向のヤマハも表現。筆者が訪れたときは、発売されたばかりの「NIKEN」が置かれていた。モーターサイクルの無限の可能性を想像させるこのバイクは、現代の製品でありながら未来感にあふれている。同プラザでは、過去、現在、未来のヤマハを感じることができるというわけだ。
ちなみに、展示されているバイクは、すべて動く状態に整備されている。いいうまでもなくたいへんな作業だが、古いものを捨てずに残していくことで、会社が培ってきたノウハウを次の世代に引き継いでいくことにつながっているという。

「NIKEN」や「2000GT」が並ぶ1階ホール

「NIKEN」や「2000GT」が並ぶ1階ホール

JAMA「Motorcycle Information」2018年12月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:ネットでは得られない発見があるバイクミュージアムへ行こう!