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2018.11.29

義務化された二輪車ABS・CBS ユーザーに必要な心構えは?

●10月1日から、二輪車(新型車)にABS・CBSの装備が義務化された。

●二輪自動車にはABSが、原付二種にはABSかCBSが必ず装備される。

●ABS・CBSを過信せず、急ブレーキにつながらない運転を心がけることが大切。

今年10月1日から、二輪車にABS(アンチロックブレーキシステム)・CBS(コンバインドブレーキシステム)の装備が義務付けられた。
ABS・CBSへの信頼感はユーザーの間に広く浸透している。義務化によってさらに普及が進むが、ユーザーのなかにはABS・CBSへの誤解や過信もあり、正しい理解が必要だ。

まず、今回のルール改正の概要を見てみよう。

二輪自動車(排気量125cc超)には、一定の技術的要件に適合したABSが必ず装備されなければならない。また、原付二種(同50cc超~125cc)には、同じく技術的要件に適合したABSまたはCBSが必ず装備されなければならないというもの。原付一種(同50cc以下)は適用外で、トライアル車などオフロード競技用の車両も適用から外された。
適用時期に関しては、新型車については2018年10月1日からで、すでに義務付けが始まっている。継続生産車などについては、2021年10月1日からの適用となっている。
ちなみに、ABSの機能をオン・オフに切り替えできるスイッチも開発されているが、これを装備することは一部の車両(オフロード競技用の車両)を除き禁止されている。

二輪車ABSの機能と効果とは?

二輪車のABSとはどのようなものか、あらためて機能と効果についてみてみたい。
まずABSは、一般的には、急ブレーキをかけた時など、車輪がロックしないようにセンサーで感知して、適正な制動力を自動的に得るための装置だ。

二輪車ABSのイメージ(国土交通省資料より)

二輪車ABSのイメージ(国土交通省資料より)

歴史を見ると、四輪車への装備は1980年代に広まっている。ABSが作動すれば車輪がロックしないので、四輪車の場合、急ブレーキを掛けながらのハンドル操作が可能で、衝突などの回避につながる効果がある。
一方、二輪車のABSの場合、急ブレーキを掛けたときに車輪がロックしないため、直進時であれば車両の安定性が保たれて、転倒を恐れずに最適なブレーキを掛けることとができる。たとえば、高速道路で直進走行しているときに時速100kmから力任せの急ブレーキを掛けたとしても、スリップすることなく安定した状態で停止できることにつながる。また、雨で濡れた滑りやすい路面でも、直進時ならば不安なくブレーキが掛けられる点も二輪車ABSのメリットとして大きい。
現在、国内4メーカーの市販車ラインアップを見ると、すでに大半のモデルがABS仕様になっている。

前・後輪の制動力をバランスよく配分するCBS

一方、原付二種にはABSか、またはCBSが必ず装備される。CBSというのは、ライダーがたとえば後輪ブレーキだけを掛けたとき、前輪にも制動力を発生させて、前・後輪にブレーキが掛かるようにする装置のことをいう。逆にライダーが前輪ブレーキだけを掛けたとき、後輪にも制動力を発生させるCBSもある。そのどちらか一方か、あるいは両方とも機能するシステムもあり、二輪車のキャラクターに合わせて、いずれかのCBSが採用されている。

二輪車CBSのイメージ(国土交通省資料より)

二輪車CBSのイメージ(国土交通省資料より)

こうしたCBSの効果としては、たとえば運転操作に不慣れなライダーが一方のブレーキのみを操作した場合でも、CBSによって前・後のブレーキがバランスよく掛かり、前後輪に適切な制動が得られる。
今回の義務化によって、原付二種に関しては、メーカーの採用方針によってABSかCBSかに製品の仕様が分かれてくる。CBSとABSを組み合わせたシステムも実用化されており、普及の方向性はさまざまだ。

あくまで運転支援装置――過信は禁物!

ここまで述べてきたように、二輪車のABS/CBSは、ライダーが不意の危険に面してパニックに陥った状況でも、車両側が自動的に適正な制動力を得ようとするものだ。その点、ライダーにとって有効な保安装置であることに間違いない。
ただ気になるのは、ユーザーのなかには、「ABS仕様のバイクは、非ABS仕様のバイクよりも制動距離が短い」といった誤解があること。装備が義務化されたことで、ABS/CBSへの過剰な信頼が高まることは避けなければならない。
一般社団法人日本自動車工業会(自工会)二輪車特別委員会 二輪車安全環境部会の担当者は、「ABS仕様車と、非ABS仕様車の制動距離を比較するとしたら、その差はライダーの運転技量や路面のコンディションなどに左右されます。運転の未熟なライダーや、路面が濡れて滑りやすい状態だとABSの効果は大きいでしょう。しかし、熟練ライダーがドライな路面でフルブレーキングをした場合、状況によっては、制動距離はABS仕様車のほうが長くなる場合もあります」と説明する。
そうした事実もあり、ユーザーがABSの機能を過信することは禁物だ。自工会・担当者は、「ABSは確かに有効な装置です。しかしあらゆる局面でABSがライダーに有利に働くとは限らないので、ユーザーはその点をしっかり認識して、急制動につながらない運転を心がけてほしい」と話している。
ちなみに、ABSが装備された二輪車は、通常の領域では非ABS仕様車のブレーキ操作と同じだが、急制動の際は、ブレーキレバー(ペダル)をガッチリ強く握る(踏み込む)のがコツだ。

JAMA「Motorcycle Information」2018年10-11月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:義務化された二輪車ABS・CBS