●8月3日岩手県一関市で第6回BLFが開催される。
●BLFはこれからどの方向へと進むのか?
●プログラムを先取りし“ネタバレ”ギリギリの情報を公開する。
8月3日(金)、第6回「BIKE LOVE FORUM」(BLF)が、初めて東北で開催される。会場は一関市「ベリーノホテル一関」で、12時45分~17時30までの予定で行われる。
初開催から5年を経て、これからのBLFはどのような方向へと進むか、関係者に話を聞く。また、当日のプログラムを先取りし、“ネタバレ”ギリギリの情報を紹介したい。
BLFのこれからの方向性は?
日本のバイク文化と二輪車産業の発展を目指して、「官民一体となって真面目に議論しよう」というコンセプトで始まったBLF。今回の開催地に一関市が選ばれたのは、全日本モトクロスが開催される「藤沢スポーツランド」があることや、ヘルメットメーカー「SHOEI」の生産工場があることも後押しとなっているが、岩手県や一関市が、東日本大震災からの復興と、地域の観光振興の一環としてBLFを歓迎してくれたことが大きい。
経済産業省 製造産業局 自動車課の高橋一幸課長補佐は、「BLFは、二輪車関係団体の間で議論を深めることが主眼ですが、これを全国各地で開催することにより、開催地の行政機関や住民にバイクのことを知ってもらう絶好の機会となり、バイク文化の普及につながると考えています。開催地の地域振興にも貢献できれば、Win-Winの関係になります。今年はMFJが行う『東北復興応援ツーリング2018』や、一関市の『夏まつり磐井川花火大会』と連動して、8月3日を大いに盛り上げたい」と話す。
“新規と既存”両方の需要拡大がカギ
一方、BLFの企画・運営に携わっている一般社団法人日本自動車工業会 二輪車特別委員会 二輪車企画部会の川瀬信昭部会長は、BLFが掲げる課題やテーマに関して、従来の取り組みを引き継ぎながら、さまざま意見にも耳を傾けていくという。
川瀬部会長は「これまでのBLFは、二輪車市場の活性化を図るため、とりわけ新規需要、若者需要の拡大に重きを置いてきました。そのための施策にも力を入れています。しかし、国内にはすでに1,100万台の二輪車保有があり、既存ユーザーをいかに大事にするか、このこともたいへん重要です。今後のBLFの活動は、新規需要の掘り起しと、既存需要の維持・活性、それらをバランスよく進め、バイク文化の創造に結びつけることが大事だと考えています」と話す。
そうした方針により、今回のBLFは、さまざまなユーザーと接点をもつ二輪専門誌に注目。人気バイク誌の編集長らがステージに登場し、日本のバイク文化、市場の発展に必要なものは何か、意見やアイデアを語り合う。主な登壇者に、当日予定している話題や発言について聞き出した。
●第6回BIKE LOVE FORUM in 岩手・一関の開催スケジュール
東北復興・ライダーにできることは何か
プログラム2・パネルディスカッション①には、ツーリング専門誌『アウトライダー』の編集長・菅生雅文さん、岩手県盛岡市在住の文芸作家・斎藤純さんらが出席し、「素晴らしいバイク文化の創造」(仮題)をテーマに話し合う。
じつは菅生さんも盛岡市の出身で、“東北愛”はことのほか大きい。2011年の東日本大震災に際しては、誌面を通じて全国のライダーに呼びかけ、福島県内で復興支援ミーティングを開催するなど、チャリティ活動を行ってきた。
一方、斎藤さんは、「岩手町立石神の丘美術館」の芸術監督を務め、地元岩手への深い理解がある。震災直後には「もりおか復興支援センター」の所長として精力的に行動した。また菅生さんとはライダー仲間であり、被災後の三陸沿岸を一緒にツーリングして現地の人たちと時間を共有してきた。
こうした2人の経験から、ステージでの話題は、「東北復興のためにライダーにできることは何か」といった話題が中心になりそう。
菅生さんは、「私は、被災地にバイクで行くということに、自問自答してきました。バイクで被災地に行くことにどんな意味があるのかずっと考えています」と、心中を語る。その言葉を斎藤さんはどう捉えるか、ライダーはどうやって地域の期待に応えるのか、当日のディスカッションで答えが出る。
需要を掘り起こす切り口はある
続くプログラム3・トーク対談は、「国内バイク市場の将来展望を語る」(仮)というテーマ。登壇するのは、自工会の「2017年度二輪車市場動向調査」を実施した株式会社JMR生活総合研究所 取締役の合田英了さん。そして『RIDERS CLUB』誌をはじめ、さまざまな分野の趣味マガジンを発行している株式会社枻出版社 取締役の埜邑博道さんの2人。
当日は、市場動向調査の結果について合田さんがポイントを紹介し、それを受けて埜邑さんがバイクユーザーの最新動向を解説。需要拡大のアイデアについて話し合うという。
合田さんは、「二輪車という商品は、潜在需要が大きいのが特徴なんです。憧れている人は多いけれど、運転免許が必要なので、実際にエントリーするところまでなかなか来ない。その需要をどう掘り起こすか具体的に考えたいですね」と話す。
一方、埜邑さんは、「ランニング、自転車、サーフィン、山登りなどいろいろな趣味マガジンがあるけれど、バイクだけは免許が必要。確かにハードルが高い趣味です。でもそれだけに、熱心なファンや読者が多いのが特徴。そこをいかに盛り上げていくかが大事」と、豊富な経験から指摘する。
合田さんは、「先細りといわれていたほかの業界が、起死回生のヒットを出したケースもあります。当日はそうした事例も紹介したい」という。埜邑さんは、「バイクの需要を掘り起こすにはタッチポイントが重要。市場活性化のアイデアとして提案したい」と話す。この対談は見逃せない。
これだけは言わせて! いま業界に必要な視点
プログラム4・パネルディスカッション②は、元GPライダーでモータージャーナリストでもある宮城 光さんがモデレーターを務め、『オートバイ&RIDE』編集長の松下尚司さん、『ガールズバイカー』編集長の原田英里さん、『タンデムスタイル』などを出版する株式会社クレタ社長の北村明広さんの4人が集まり、「バイクユーザーを未来へ導く」(仮)と題して、自由な意見をやりとりする。
松下さんは、「『オートバイ』は創刊96年なのですが、私が担当しているこの3年間もいろいろなチャレンジをしています。Webメディアの活用もそうですし、オートバイを擬人化した漫画などは、これまでとは違うユーザー層に広がっています。もちろんそれが“主たる『オートバイ』”ではないんですが、若者に共感される価値観っていうのはバイクのなかにまだまだあると思っています」と話す。
原田さんは、「女性ユーザーと接していると、本当にいろいろな驚きがあります。アメリカンバイクを買いに行ったのに、買ってきたのはスーパースポーツだったりとか(笑)。多くの女性はバイクについて、知識よりも感性でやってしまう。購入するのにも決断は速いし、お金もケチらない。女性の感性は勢いがあって、そこさえ捉えれば、需要層として大きいと思います」と話す。
北村さんは、「私がこの機会に訴えたいのは、クルマの普通免許で原付二種を運転できるようにすること。なんとしても実現させたい。それと、『ラブ・ジ・アース』という海岸清掃のイベントがあるんですが、高校生や大学生がバイクに乗って来てくれるのが嬉しい。大人のライダーが次の世代に伝えていく作業も大事です」と話す。
宮城さんは、「私が教えているライディングスクールの参加者は、レーシングスーツをビシッと着て、年齢は50歳以上です。いま40代もいない。若い人も大切だけど、こういう人たちをもっと大切にしないと! 60歳、70歳まで乗ろうと思えばまだ10年、20年はある。だったら新しいバイクを買いましょう。そしてもう1回レッスンしましょう。50代、60代のライダーの皆さんは、市場の大きなカギを握っているんです」という。
ただ、当日のディスカッションで、こうした意見が再現されるとは限らない。どの人も次々に刺激的な話題を繰り出して、展開の予想がつかないからだ。シナリオのないホットなトークにこそ、このプログラムの醍醐味といえそうだ。
JAMA「Motorcycle Information」2018年4月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:BLF in 岩手・一関
元となったMotorcycle Informationの記事をPDFでも読むことができます:
Motorcycle Information 2018年7月号特集BLFin岩手・一関