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2020.3.25

市民の足として大活躍 原付普及率が日本一のまち!(前篇)

●統計をもとに、全国の市区町村から原付の普及率が高いまちを割り出した。

●20万世帯以上を擁する都市のなかで、ナンバーワンは愛媛県松山市。

●原付がどのように使われているか、現地を訪ねてみた。

全国の市区町村ごとに、原付(50㏄以下)の世帯当たり保有台数(普及率)を割り出した(末尾資料参照)。

01_原付が多く走るまち.ここはどこ?

比較的大きな都市(20万世帯以上)で抽出したところ、愛媛県松山市が2位に大きな差をつけて第1位になった。普及率ナンバーワンのまちで、原付がどんなふうに使われているか、現地を訪ねてみた。

松山市・朝は原付の通勤ラッシュで始まる

愛媛県松山市(人口51万人・25万世帯)には、原付が5万8,345台保有されており、1,000世帯当たりで236.2台(約24%)が普及している。20万世帯以上を擁する市区は全国に47あるが、その括りのなかで松山市は断然トップ。堂々日本一の“原付のまち”である。
2月初旬の朝8時、JR松山駅近くの路上で交通状況を観察してみた。真冬の寒さにもかかわらず、通勤途中らしき原付があちこち目に入る。タイミングによっては列をなして走り、信号で止まると車線が原付で埋まる。この光景に、普及率の高さが実感される。

朝早い松山市内 原付が列をなして走る

朝早い松山市内 原付が列をなして走る

信号が赤になると車線が原付で埋まる ※交差点には二輪専用停止線もある

信号が赤になると車線が原付で埋まる
※交差点には二輪専用停止線もある

女子大生の4人に1人がバイク通学

通学での原付の利用状況はどうか。松山市の中心部から東へバスで15分ほど行った場所にある松山東雲女子大学を訪ねてみた。キャンパスの駐輪場を覗くと、ここにも原付がびっしり、整然と駐車してあった。

大学の駐輪場(自転車はまばらだが原付はびっしり状態)

大学の駐輪場(自転車はまばらだが原付はびっしり状態)

同大学の学生支援部によると、現在、大学と短大を合わせた学生929人のうち、バイク通学者は207人(22.3%)。4~5人に1人がバイク通学だ。学年が上がって4年生ともなると、101人のうち38人(37.6%)がバイク通学をしている。松山市の大学生にとって、原付はメジャーな乗り物として浸透しているのである。
学生に話を聞くと、「バイクに乗りたいというより、乗らなければ損な移動手段です。市内ならどこに行くのもバイクがいちばん便利だし、電車やバスに乗らないぶん、お金と時間が節約できます」と、Aさん(1年生)。

バイク通学のAさん

バイク通学のAさん

Bさん(2年生)は、「おばあちゃんがバイクに乗っていたので、高校を卒業したら私も乗ろうって、普通に考えてました。自転車よりずっと身近に感じる乗り物です」という。

バイク通学のBさん

バイク通学のBさん

学内の交通安全を担当している山本斉教授(芸術学)は、「松山では、男も女もバイクに乗る文化があるのだと思います。いまの学生たちの親世代、その上の世代もバイクを当たり前に利用してきたので、バイク文化が刷り込まれているんですね。危ないからと、バイクに反対するような家庭は少ないです。この大学でバイク通学者が多いのは、そういう環境で育った地元出身の学生が8割近くを占めているからでしょう」と話す。
ちなみに同大学では、毎年5月に愛媛県警察本部交通機動隊と松山東交通安全協会などの協力で「バイク・自転車講習会」を実施し、この講習を受けた学生にバイク通学を許可している。例年50人以上の参加があり、二輪車の安全運転を学んでいるという。

バイク 自転車講習会(昨年の模様)

バイク 自転車講習会(昨年の模様)

コンパクトシティには原付がちょうどいい

「松山市が原付の普及率日本一と聞いて、驚いています」と話すのは、松山市 市民税課の栗田秀樹主幹。普及の要因について「明確にはわからない」としながらも、「当市は晴れの日が多く、温暖で穏やかな気候がバイクの利用には最適です。また市政としても、都市の機能がギュッと集まったコンパクトシティを目指しており、市の中心部から半径1.5km以内に商業施設、金融機関、病院、学校、行政機関などが揃っています。短距離を気軽に移動できる自転車や原付が便利なのです。まちのサイズ感がちょうど原付に合っているといえます」と、説明する。
そして松山市といえば、全国に先駆けて、2007年に原付の“ご当地ナンバープレート”を導入したまちでもある。雲の形のナンバーは、市民の間にすっかり馴染んでおり、観光客からも「カワイイ!」と好評だそう。栗田主幹は、「そうした取り組みも、原付の利用を後押ししているのかもしれません」と話す。

原付のご当地ナンバープレート(松山市市民税課で)

原付のご当地ナンバープレート(松山市市民税課で)

そして、参考までにと案内された市役所の地下には、無料の駐輪場(バイク385台・自転車100台収容)があり、原付や自動二輪車がぎっしり並んでいた。このようにバイクにフレンドリーなサービスがあること自体、いかに松山市が市民の足を大事にしてきたかがわかる。

市役所地下の無料駐車場は満車状態だ

市役所地下の無料駐車場は満車状態だ

さらには、こんな話題もある。ライダーの安全運転技能の日本一を競う「二輪車安全運転全国大会」で、昨年、愛媛県交通安全協会選抜チームが全国優勝を果たしたのだ。愛媛県交通安全協会では、「選手は、愛媛県二輪車交通公園*注を積極的に活用するなど、安全運転の技能向上をめざして熱心に取り組んでいます」と話している。

安全運転日本一となった愛媛県チームの走行

安全運転日本一となった愛媛県チームの走行

バイクを便利に思う市民意識と良好な利用環境が、松山市の原付普及を進めてきたものといえそうだ。

注:愛媛県二輪車交通公園:原付および自動二輪車専用の運転練習場。誰でも有料で利用できる。

〈資料〉全国・原付の世帯普及率ランキング(20傑)

●20万世帯以上を有する市区における原付一種普及率(上位20団体)
11_20万世帯以上を有する市区における原付一種普及率(上位20団体)

市区町村別の原付の保有台数は、総務省の「軽自動車税に関する調」より、原付一種の賦課期日現在台数(2018年7月1日現在)を抽出した(表中の原付一種の欄)。人口および世帯数は、総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2019年1月1日現在)から抽出した。
ランキングは、指定都市の規模を目安に、20万世帯以上の都市(47団体)を対象とした。20傑を一覧表にした。

JAMA「Motorcycle Information」2020年3月号/特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF:市民の足として大活躍原付普及率が日本一のまち!(前篇)