●女性ライダーの割合は男性に比べてまだまだ少ない。
●運転への苦手意識が女性をバイクから遠ざけている。
●女性に優しいと評判の二輪車教習所を訪ねてみた。
女性ライダーを応援します!――伏見デルタ
京都市伏見区にある「伏見デルタ」は、二輪専門の教習所。2月の平日に訪ねてみると、コース上には多くの教習生がいた。何人か女性の姿もある。総務部長は「ピークは3月。今日はまだ少ないほう。遠い他県からもやって来て、合宿で免許を取る学生さんもおられます」という。京都を観光しながら免許を取得できるとあって、北海道から沖縄まで、教習生は全国から集まるそうだ。
同校における女性の教習生の割合は約1割。「女性は20~30代が中心ですが、最近は親の勧めで入校する10代の女性が増えています。原付に乗りたい女子高生が、親から『ちゃんと習って自動二輪に乗りなさい』と言われて小型限定を取りに来たりします」という。
この日教習を受けていた女性に、教習の感想を尋ねると、「運転することに自信がなかったので初めは勇気がいりましたが、教官が優しく接してくれるのでがんばっています」と話す。
同校のWebサイトには、「女性ライダーを応援します!」というコーナーがあって、女性たちの教習シーンを紹介した動画が30本以上アップされている。「動画を見て、あの雰囲気なら大丈夫そうと思った」という教習生もいて、入校の後押しになっているという。
不安解消は「第1段階」がカギ――狭山モータースクール
埼玉県狭山市にある「狭山モータースクール」は、卒業してからも参加できる「二輪道場」や「ペーパーライダースクール」といった講習会を実施したり、「ツーリングクラブ狭山」を作って卒業生を集めてツーリングも楽しんでいる。免許を取得したら終わりでなく、取得後のアフターフォローに力を入れることで、“安心してバイクを楽しめる教習所”という特色を打ち出している。
同校では、「バイクに乗れるか心配」という女性のために「レディースコース」という教習プランを用意している。これは、教習の「第1段階」をインストラクターにマンツーマンで指導してもらえる。また、女性専用車両が使用できるという特典も付いている。
フロントサービス統括部の担当者は、「多くの女性は、運転操作や車両の取り回しを習う“第一段階”を苦手にします。そこを1対1で丁寧に教えるので、自信のない女性も安心してバイクに向き合うことができると思います」という。
この日、大型二輪の教習を受けていた女性は、「普通二輪免許を取りに来たとき、初めはバイクが怖くてドキドキしたのを覚えています。でも実際通ってみたら教習は楽しくて、最初の不安は無用でしたね」と話し、いまは余裕しゃくしゃくの様子だった。
体格や力の弱さは克服できる―阪神ライディングスクール
兵庫県尼崎市にある「阪神ライディングスクール」は、誰もが安全に教習できる」をモットーにする二輪専門の教習所。教習プランに“レディースパック”を設けたり、低シート車を導入したり、女性専用の休憩室を用意するなど、きめ細かな配慮をしている。入校者の約3割は女性だという。卒業した女性から、新しくバイクに乗りたいという女性へと、口コミで信頼感が広まっている。
同校の女性インストラクターは、「男性に比べて、女性は体格が小さくて力が弱いですから、バイクに跨ったときに足着きが不安という人、倒れたバイクを起こせないという人が大勢います。でも、コツを覚えて慣れてしまえば、ほとんどの人が大丈夫」という。
そこで、身長147cmのインストラクターに、低シートにした女性用の教習車に跨ってもらった。「私でも両足がなんとか着くし、片足さえうまく着けるようになれば問題ありません」とのこと。また、倒したバイクを起こしてもらったが、たいした力もかけずに難なく持ち上げた。「小さな体格でもインストラクターをやれるんですから、私を見て励みになる方もいるようです」と、話してくれた。
体格や腕力に不安があって、教習所の門をくぐる決心がつかない女性は少なくない。しかし、ここで紹介している二輪教習所では、入校する前に教習車に跨ってみたり、倒れたバイクを起こしてみるなど、事前の体験は大歓迎という。心配な人は、ぜひ相談してほしいということだ。
女性限定の合宿免許が大好評――大佐和自動車教習所
千葉県富津市にある大佐和自動車教習所では、女性限定の合宿免許を行っており、県内以外にも首都圏から大勢の教習生が集まってくる。女性に限定していることで、女子高生や女子大生本人にはもちろん、親が安心して娘を送り出せるということで人気があるわけだ。
教習所が運営している宿舎は3棟に各14部屋あり、2人ずつ入居できるため、最大で84人が合宿可能。ハイシーズンには近隣の民宿も女性専用で借り切り、20人程度は追加で受け入れが可能という。
同校では、「春は四輪免許のために合宿する学生でいっぱいですが、シーズンが落ち着けば、バイクの免許を取りたい女性たちに、合宿免許は快適だと思います。お母さんと娘さんとか、友だち同士とか、一緒に合宿して二輪教習を受ければ楽しいと思います」という。二輪免許を取得するのを一つの“レジャー”と捉えれば、房総の海に滞在してリゾート気分で教習をこなすという選択肢は、大いにありだ。
女性の普通二輪免許取得状況
●女性の普通二輪免許取得者の推移
最後に、警察庁の『運転免許統計』(現在の最新は2015年の数字)をもとに、女性の二輪免許取得状況についてみてみたい。
2015年1年間のわが国の普通二輪免許の交付件数は男女合わせて17万6,076件。このうち女性への交付件数は2万7,030件で、全体に占める割合は15.4%となっている。
二輪免許を取得する女性の割合は明らかに少ないが、言い換えれば、今後の“ノビシロ”は大きいともいえる。女性ライダーの拡大はこれからだ。
★JAMA「Motorcycle Information」2017年3月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF: 女性と二輪車教習所