●各方面で活躍する4人の女性ライダーが出席し、座談会を行った。
●前編は、出席者自身のバイクライフを紹介。
●バイクに乗り始めたきっかけや海外事情など、興味津々の話題。
※この記事は発表当時(2017年1月)の内容を掲載したものです。
=出席者(50音順)=
●岡崎 静夏(おかざき しずか:1992年・横浜市生まれ):バイクレーサー
2016年のロードレース世界選手権日本グランプリ(Moto3)クラスに出場。日本人女性としては21年ぶりの快挙。
●川崎 由美子(かわさき ゆみこ:静岡県生まれ)二輪ジャーナリスト、ピアニスト
1982年からテレビ・ラジオのレポーターとして活躍。1991年にメキシコのラリー「BAJA 1000」を完走。2006年からドイツ・デュッセルドルフに在住し、2013年帰国。
●下川原 利紗(しもかわら りさ:1993年・埼玉県生まれ)タレント
2015年ミスユニバース埼玉県代表。テレビ、二輪専門誌でタレント活動を展開中。
●保田 奈那(やすだ なな:神奈川県生まれ)二輪専門誌編集者
2005年クレタ入社。『レディスバイク』『タンデムスタイル』『アンダー400』『風まかせ』『スクーターデイズ』などを担当。トライアルはじめモータースポーツ全般が趣味。
司会:『Motorcycle Information』編集部
ライダー4人それぞれのプロローグ
【司会】本日はお集まりいただきありがとうございます。さっそく座談会を始めたいと思います。はじめに岡崎さん、昨年(2016年)はロードレース世界選手権の日本グランプリ(Moto3クラス)に出場されたわけですが、振り返っていかがですか?
【岡崎】まだまだ力不足でしたが、世界の壁の厚さがハッキリわかりました。最後の1~2周でやっと自分なりにレースの糸口をつかめたので、「もう1回最初から走らせて!」って感じでした(笑)。でも、たくさんの人に応援してもらって、広がりを感じた1年でした。
【司会】続いて下川原さん、ミスユニバース(2015年・埼玉県代表)がバイクに乗るというので大いに注目されましたね。バイク関連の仕事も多かったようですが。
【下川原】はい。バイクは私のいちばんの趣味なんですが、いざ仕事で関わってみると、たとえばレースにしても、ピット作業の舞台裏を見せてもらったりして、ますます感動しました。ファン目線ではない角度からバイクの世界を見て、ちょっと視野が広がった感じがします。
【司会】続いて川崎さん、2013年まで8年間ドイツで暮らしていたそうですが、日本に帰ってきていかがですか?
【川崎】帰国してからつくづく感じるんですが、日本ほど女性が安心してバイクを楽しめる国は他にないですね。ツーリング先でバイクが盗難にあう心配もないし、どこに行っても夜中でもコンビニがあるから、食事や休憩をどうするかという心配がまったくありません。そのうえ見事な四季が楽しめるんですから最高ですよね。ヨーロッパの国々だとそうはいきません。
【司会】確かにそう言われてみると、日本のツーリング環境は安心と便利が行き届いているんですね。さて、保田さんは二輪専門誌『レディスバイク』の編集を担当されています。
【保田】はい。本誌は30代のライダーを中心に、これから免許を取りたいという10代、20代、子育ての済んだ40代、50代まで、幅広い層の女性たちに読んでもらっています。今日のテーマにも関係しますが、女性はいろいろな事情で「乗りたいけど乗れない」悩みが多いんですね。そこをどう克服するか、「こうすれば楽しめるよね」っていう提案をいつも心がけています。
親の影響で乗り始めた女性たち
【司会】岡崎さんは、レース以外の日常でもバイクには乗るんですか?
【岡崎】はい。最近400ccの新しいスポーツバイクにしたばかりで、片道25kmで約1時間の通勤にほぼ毎日使っています。あと、3つ下の弟と一緒にツーリングに出かけることもあります。両親ともバイクに乗るので、今日は外でご飯食べようとかいう話になると「じゃあバイクだね」ってなって、4人家族が4台で移動という、なんとなく無駄な(笑)、でも気楽で楽しいバイク一家なんです。
【下川原】私の家もみんなバイク好きです。休みになると父と母がタンデムして私と2台で、住んでいる埼玉県内の名所を巡ったりします。独立した兄が2人いるんですが、やはりバイクに乗るので、たまにみんな集まってツーリングすることもあります。バイクは家族のコミュニケーションに欠かせない存在ですね。
【司会】岡崎さんも下川原さんも両親がバイク好きで、娘が乗ることにも理解があったわけですね。保田さん、いまそういうふうにして免許を取る若い女性が増えているんでしょうか?
【保田】親の影響で乗るケースはまだ珍しいほうかな。やはり女性がバイクに乗り始めるのは、自分の彼氏や男友だちの影響を受けてというのがいちばん多いと思います。あとは晩婚化もあって、自立したカッコいい女性のアイテムとして、誰の影響でもなくバイクに乗る女性は増えています。それもまだ少数派ですけどね。岡崎さんは、親の影響がなくてもバイクに乗ったと思いますか?
【岡崎】どうでしょうね。彼氏に教えてもらって乗り始めるなんて素敵。私もそうやってバイクに出会いたかったな(笑)。私は16歳で免許を取りましたが、両親に感謝しているのは、どんなに暑くてもフルフェイスとライディングウエアを徹底されたこと。そこから安全への心がけが染み付きました。親からバイクを教えてもらって、そういうところはすごくよかったです。
【下川原】私もバイクに乗るのは当たり前と思って育ちましたが、はじめは母に反対されて、二輪免許を取ったのは19歳になってからでした。たぶん父が私と一緒に走りたくて賛成してくれたんだと思いますが、その父も普段は優しいのに、バイクのことになるとやたらと厳しいんです(笑)。でも、親からバイクの乗り方や心構えを教えてもらえたのはとてもよかったと思います。最近は私の周りにもアクティブな女性がすごく増えているので、バイクの安全について正しい理解が広がれば、もっと乗りたいと思う女性が出てくると思います。
バイクの路上教習が目に止まる欧州
【司会】なるほど、最近は親の影響で乗り始める人も増えてきているんですね。川崎さん、ヨーロッパでの女性のエントリー事情はどうですか?
【川崎】女性ライダーの数でみたら、日本に比べたら多いでしょうね。ドイツはとくに元気で、大型バイクやスポーティなタイプが大好き。女性限定のライダー団体もあって、世界的に活動していますよ。イタリアも女性ライダーは多くて、スクータータイプを日常的に乗っている感じ。
免許取得について日本と大きく違う点を挙げると、EUはバイクにも路上教習があるんです。教官が生徒にインカムを使って指導するんですが、公道での実地訓練は、女性たちにとってすごく心強いスキルになると思います。日本ではせっかく免許を取っても、公道が怖くて一度も車庫からバイクを出せない人もいるくらいですから。
【司会】それは笑えない話ですね。でも、バイクの路上教習って危なくないですか?
【川崎】制度として成り立っているわけですから、リスクは管理されていると思います。それにオープンに行われていることで、道行く人が「バイクの教習やってるなあ」って、見て思うわけじゃないですか。「私もバイク免許取りたいな」となる人も多いと思うんです。
【司会】なるほど。日本では見られない光景ですからね。教習シーンを目にすれば、「バイクっていいかも」というきっかけになる可能性はありますね。
(後編に続く)
JAMA「Motorcycle Information」2017年1月号特集より
本内容をPDFでもご確認いただけます。
PDF: 女性ライダー座談会(前編)